2025年10月08日
コオロギQ&A
Q1 ハイジェントのコオロギは、食品として安全ですか?
A
ハイジェントのコオロギは、食用として特別に完全屋内で飼育しています。ISO9001-HACCP(食品安全)の認証を取得し、食品としての安全性に十分に配慮しています。コオロギに与えるエサについても、米ぬか、乾燥おからなど、衛生的な素材を独自に配合して与えています。加えて、収穫の24時間以上前から絶食させ、体内にエサなどが残らないようにしています。また、コオロギの加工工程は、食品衛生法に基づく営業許可を受けた自社施設において行っています。このように、ハイジェントでは、食品としての安全性を第一に、コオロギ事業に取り組んでいます。
Q2 食用コオロギは、普通のコオロギと何が違うのですか?
A
食用コオロギは、食品安全と食味の両方の観点から、食用としての品質を十分に担保できるよう、飼育環境や与えるエサなどに特別な配慮をして育てたコオロギです。野生のコオロギや、ペットショップで動物のエサ用として売られているコオロギとは違います。
Q3 コオロギを食用にすることに、何の意味があるのですか?
A
私たちが生きるには、タンパク質が不可欠です。特に、牛、豚、鶏などの家畜は、私たちの主要なタンパク質源となっています。
家畜の飼育には、大豆やトウモロコシなどの飼料用作物が欠かせません。しかし、世界人口の増加が続く中で、飼料用作物の増産は限界に近づきつつあります。加えて、気候変動により、農業生産は不安定化しています。今後もこうした状況が続けば、食肉の需要に対して供給が追い付かなくなり、価格が高騰する恐れがあります。もし、そのとき、既存の家畜以外の「第四の選択肢」があれば、需要の集中が回避でき、価格高騰が避けられるかもしれません。コオロギは、飼料用作物に依存せず、環境負荷も少なく、生産効率が高いので、この「第四の選択肢」の有力な候補となるのです(詳細は、<解説>を参照。)。
私たちは、コオロギは「未来のための選択肢の一つ」と考えています。今、コオロギを食べることに、特に意味はありません。しかし、将来、必要になったときに備え、今から技術と知識を蓄えることには、大きな社会的意義があると考え、私たちはコオロギ事業に取り組んでいます。
<解説>
~ なぜコオロギは環境負荷が少ないの? ~
コオロギの環境負荷の少なさは、大きく「変温動物」と「雑食性」という2つの性質に由来します。
牛、豚、鶏は、自分で体温を作り出す「恒温動物」です。一方、コオロギは、体温を外気温に委ねている「変温動物」です。変温動物は、体温を作り出す必要がないので、体重当たりのエネルギー消費量は、恒温動物のわずか1/30で済みます。よって、食べたエサの大部分は体の成長に使われ、少ない餌で大きくなります。
また、コオロギは「雑食性」です。このため、コオロギは、大豆やトウモロコシなどの飼料用作物に依存することなく、捨てられてしまう食品残渣やフードロスだけで飼育できます。しかも、上記の通り、少ない餌で育つので、生産効率が非常に高いです。
このほかにも、コオロギは水の消費量が非常に少なく、CO2の排出量も少ないです。このように、コオロギは、牛、豚、鶏と比較して、少ない環境負荷で、私たちに必要な動物性タンパク質を効率的に作り出すことがでます*。
* 魚も、コオロギと同じ変温動物です。しかし、エサの食べ残しが生じるため、飼料利用効率は必ずしも高くありません。また、魚の養殖は魚粉に強く依存しており、魚をエサに魚を育てていることも課題です。
Q4 様々な昆虫がいる中で、なぜコオロギなのですか?
A
まず、飼いやすさがあります。コオロギにも様々な種類があります、一般に食用とされる「フタホシコオロギ」と「ヨーロッパイエコオロギ」は、熱帯性のコオロギです。熱帯性なので、季節に応じて冬眠するなどの性質がなく、温度が一定以上であれば一年を通して繁殖し、とても飼いやすい種類です。
また、成長の速さと繁殖効率の高さがあります。フタホシコオロギは、1か月で体重が実に800倍にも成長します。また、1組のつがいから約500倍に増やすことができます。必要な餌も少ないので、とても効率よく生産することができます。
雑食性も、重要な性質です。たとえば、バッタは草食性で、生の草しか食べません。一方、コオロギは雑食性なので、食品残渣やフードロスだけで飼育することができます。つまり、捨てられてしまう未利用資源を、有用なタンパク質へとアップサイクルすることができるのです。
雑食性でも、腐ったものだけを食べる「腐食性」という性質の昆虫もいます。ハエの幼虫や、アメリカミズアブの幼虫が、腐食性です。腐食性の場合、腐敗または発酵したエサを与える必要があるため、衛生管理が難しくなります。他方、コオロギは、腐食性ではありません。したがって、ドライペレットなどの腐りにくい餌で、衛生的に育てることができます。
このように、コオロギは、他の昆虫と比較して、食用タンパク質の生産に適した多くの性質を備えています。
Q5 熱帯性のコオロギを飼育するには、室温を高く維持する必要があり、化石燃料を消費してCO2を多く排出するのではありませんか?
A
フタホシコオロギは30℃~33℃程度、ヨーロッパイエコオロギは27℃~30℃程度が、飼育適温と言われています。日本でこうした室温を一年を通して維持するには、特に冬に多くのエネルギーを消費します。冬期の暖房を化石燃料に依存すると、CO2を排出し、環境負荷が少ないコオロギのメリットは薄れてしまいます。したがって、将来的には、太陽熱や排熱などを有効活用し、暖房のための化石燃料の消費を減らすことで、コオロギの可能性を最大限に引き出すことができると考えています。
Q6 食用コオロギは、政府が推進しているのですか?補助金がたくさんもらえるのですか?
A
食用コオロギを日本政府が推進しているという事実は、ありません。あくまで、各民間企業の責任と判断の下で、取り組まれています。
また、補助金がもらえるという事実もありません。たとえば、コオロギの事業者が中小企業である場合、中小企業を対象とした補助金を受給できる場合はありますが、これは、コオロギ事業者だから受給できるものではなく、中小企業だから受給できるものです。
Q7 コオロギが「未来のための選択肢」なのであれば、今は研究だけをして、販売しなければいいのではありませんか?
A
私たちは、民間の企業です。コオロギ生産の技術開発に必要な経費も、自分たちの収益からまかなう必要があります。したがって、関係法令を遵守したうえで、生産したコオロギを販売し、収益を求めることは、当然の営みです。コオロギを食べたくないと感じる方は、食べないようにしていただければと思います。
Q8 虫が嫌いな人もいるのに、なぜコオロギを食べないといけないのですか?
A
嫌いな人が無理をして食べる必要は、まったくありません。食の好みは、人それぞれです。私たちは、コオロギを食べたい、食べてみたいと思う方に、美味しいコオロギをお届けしていきたいと考えています。
Q9 誰がコオロギを食べさせようとしているのですか?
A
誰も食べさせようとしていません。一時期、メディアで盛んに取り上げられたため、押し付けられていると感じる方が多かったのかもしれません。私たちは、コオロギを食べたい、食べてみたいと思う方に、美味しいコオロギをお届けしていきたいと考えています。
Q10 知らないうちにコオロギを食べてしまうことはありませんか?
A
コオロギを原材料に含む食品は、必ず、原材料欄に「食用コオロギ」「コオロギパウダー」などと記載されています。原材料欄を確認いただければ、知らないうちにコオロギを食べてしまうことはありません。
Q11 「アミノ酸等」の「等」には、コオロギが含まれていることがあると聞きましたが、本当ですか?
A
「アミノ酸等」とは、うま味調味料として、化学合成したアミノ酸に、核酸や有機酸を配合したときに用いられる表示です。したがって、アミノ酸等の「等」とは、核酸や有機酸を意味し、そこにコオロギが含まれることはありません。
Q12 コオロギは、動物のエサにするものではありませんか?なぜ人が食べるのですか?
A
コオロギは、ペットの爬虫類向けのエサとして、ペットショップなどで販売されています。また、近年では、養殖魚などのエサとしても、注目され始めています。他方で、コオロギは、食用の動物性タンパク質としても、非常に高い可能性を秘めています(Q3および<解説>参照)。ヒトに必要なタンパク質の供給源として考えたとき、養殖魚や畜産物を介して接種するより、コオロギを直接接種した方がはるかに効率が良いので、わたしたちは、人の食用としてのコオロギ事業を中心に取り組んでいます。
Q13 コオロギにはアレルギーがあると聞きましたが、食品として不適当ではないですか?
A
コオロギをはじめとする昆虫類には、エビやカニと類似のアレルギー物質(トロポミオシン)が含まれています。よって、エビ・カニアレルギーをお持ちの方は、コオロギをはじめとする昆虫類は食べないようにしてください。
また、稀に、エビ・カニアレルギーではない方が、昆虫を食べるとアレルギーのような症状を発症する場合があると報告されています。したがって、はじめて昆虫を食べる方は、まずは少量から試されることをお勧めします。
アレルギー物質は多種多様で、昆虫だけでなく、様々な食品に含まれています。米、小麦、豚肉、魚など、多くの人たちが日常的に食べている食品にも、アレルギー物質は含まれます。したがって、アレルギー物質が含まれていることで、直ちに食品として不適当とは言えません。重要なことは、アレルギー物質が含まれていることを、表示などを通じて消費者に情報提供し、アレルギーを有する方が誤って食べることがないようにすることです。コオロギは、国の指定するアレルギー物質には含まれませんが、業界の自主判断として、商品パッケージにアレルギーに関する注意表示を行っています。
Q14 コオロギはプリン体が多いと聞きましたが、食品として不適当ではないですか?
A
コオロギに含まれるプリン体総量は、鶏レバーと同程度です。したがって、尿酸値の高い方に、コオロギはお勧めできません。また、日本では、コオロギは乾燥状態で食用とされることが多いですが、その場合、水分が失われる分だけ成分が濃縮され、プリン体総量も生の鶏レバーの3倍~4倍程度になります。目安としては、乾燥コオロギ50匹程度(約8g)で、鶏レバーの焼き鳥1本(約30g)と概ね同量のプリン体が含まれます。
Q15 コオロギは微生物が多く、食品として危険ではありませんか?
A
コオロギは、内臓を含む全身が可食部となるため、精肉などと比較すると、調理前の微生物の数は多いです。したがって、適切な加熱処理を行ってから食べることが重要です。沸騰したお湯で茹でるなど、適切な加熱処理を行えば、微生物の数は食品として問題のない水準まで減少します。これは、アサリなどの貝類を加熱してから食べるのと同じことと言えるでしょう。
Q16 コオロギの体内には、加熱しても死なない耐熱性の微生物がいると聞きましたが、食品として危険ではありませんか?
A
コオロギの体内には、セレウス菌、ウェルシュ菌、ボツリヌス菌などの耐熱性の微生物(耐熱性芽胞形成菌)がいる場合が多いことがわかっています。たとえば、セレウス菌は、土壌中に広く存在し、市販の野菜などからも検出されます。ボツリヌス菌は、ハチミツに含まれていることがあります。このように、耐熱性の微生物は、コオロギに限らず、様々な食品に含まれていることがあり、耐熱性の微生物がいるから直ちに食品として危険ということにはなりません。重要なことは、これらの微生物が大量に増殖することがないように、適切な加熱調理と温度管理を行うことです。これは、コオロギに限らず、食品全般に共通することです。
Q17 コオロギの体内に、危険な寄生虫はいませんか?
A
欧州食品安全委員会のリスク評価によると、食用コオロギの寄生虫による汚染は報告されていません。寄生虫は、外部から体内に侵入しますので、寄生虫による汚染を防ぐには、エサと飼育環境の衛生管理を適切に行うことが重要です。ハイジェントでは、米ぬかなどをペレット状に加工したエサを与え、完全屋内の衛生的な環境でコオロギを飼育しており、寄生虫による汚染が生じることは考えられません。
Q18 コオロギは、重金属で汚染されていませんか?
A
コオロギに限らず、動物は、食べたエサに含まれる重金属を体内に蓄積する性質があります(いわゆる生物濃縮)。したがって、動物性食品の重金属による汚染を防ぐには、エサに含まれる重金属を、問題のない水準まで低く保つことが重要となります。
コオロギの場合、特に魚粉を多く含む餌を与えると、体内に重金属が蓄積されやすいことがわかっています。このため、ハイジェントでは、米ぬかなどの植物主体のエサをコオロギに与え、生産したコオロギの重金属を測定し、食品として問題のない水準であることを確認しています。
Q19 コオロギに含まれるキチンには、発がん性があるのではないですか?
A
キチンは、コオロギをはじめとする昆虫類や、エビ・カニなどの甲殻類の外骨格を形成する物質です。キチンに発がん性があるという学術論文などの科学的証拠は、見当たりません。コオロギのキチンに発がん性があると最初に発信したのは、米国のロバート・マローン氏という、コロナワクチンに強く反対してきた人物とみられます。同氏は、2022年8月25日付の自身のブログ記事において、「いくつかの研究は、コオロギのキチンには発がん性があるかもしれないという証拠を示している」と記述しています。しかし、その「いくつかの研究」の具体的内容も出典も、一切示していません(malone.news ” Eating Bugs: Let's Dig into It!”)。なお、キチンは、椎茸やシメジなどのキノコ類にも豊富に含まれており、食物繊維としての機能を有しています。保湿作用があるため、化粧品などにも使われています。また、キチンには土壌改良効果があり、カニの殻などが有機肥料として利用されています。
Q20 日本人が食べてこなかったコオロギを食べることは、危険ではありませんか?
A
1919年(大正18年)に、日本の農商務省が実施した全国調査(三宅恒方(1919)「食用及薬用昆虫に関する調査」)において、長野、新潟、福島の3県でコオロギが食用として報告されています。また、愛媛、高知、大分において、コオロギが薬用として報告されています。このように、少なくとも大正時代までは、局地的ではありますが、日本国内でもコオロギは食用・薬用とされてきた記録があります。よって、日本人はコオロギを食べてこなかったというのは、事実ではありません。また、同調査では、カミキリムシの幼虫など、全部で55種類の昆虫が、日本各地で食用とされていたと記されています。このことから、かつての日本人は、それぞれの地域の身近な昆虫を、貴重なタンパク源として食べていたことがうかがえます。
Q21 コオロギよりも、伝統的に食べてきたイナゴの方が安全ではありませんか?
A
1919年の調査(Q20参照)をみると、イナゴは、日本国内で最も広く食用とされていた昆虫であることがわかります。これは、イナゴが稲の害虫として日本中に分布し、農薬がない時代には捕まえて駆除していたこととも関係していると思われます。このような歴史的背景から、イナゴは、現在でも、日本の伝統的な食用昆虫と認識されていると考えられます。
食品としての安全性の観点からは、イナゴもコオロギと同様に昆虫ですので、アレルギー物質を含み(Q13参照)、全身を食用とするので微生物の数が多く(Q15参照)、重金属の生物濃縮が生じ得ます(Q18参照)。したがって、コオロギよりもイナゴの方が食品として安全ということはなく、同様に、アレルギーへの注意や加熱調理が必要です。
Q22 コオロギは、漢方では毒であり、妊婦が食べると流産すると聞きましたが、本当ですか?
A
1983年に出版された『漢方医学大辞典』という書籍の「蟋蟀(コオロギ)」の項目に、「微毒。妊婦は禁忌。」との記述があります。このことが、2023年1月にSNSで発信され、「毒」や「流産」という形で拡大解釈され、拡散しました。しかし、実際には、右記の通りで、『漢方医学大辞典』には「毒」とも「流産」とも書かれてはいません。また、「漢方医学大辞典」には、「微毒。妊婦は禁忌。」という記述とともに、いくつかの効能も書かれています。
事実関係は、以上の通りです。なぜ『漢方医学大辞典』に「微毒。妊婦は禁忌。」という注記がなされたのかは、私たちにもわかっていません。したがって、気になる方は、コオロギを食べることはやめておいた方が良いと思います。また、妊娠中の方が、あえてコオロギを食べる必要性もありません。なお、コオロギは、日本では馴染みのない食材ですが、タイでは屋台などで売られ、伝統的に広く食用とされています。
Q23 コオロギを食べるよりも、フードロスを減らすことの方が大事ではありませんか?
A
フードロスは、非常に重要な社会課題です。私たちは、未来の選択肢として、今からコオロギ事業に取り組んでいるわけですが、もし、フードロスを減らすことで、将来的な畜水産物の供給不安が解消するのであれば、それが一番良いと考えています。なお、コオロギは雑食性ですので、フードロス問題の解決にも貢献します(Q3の<解説>参照)。
Q24 コオロギを生産するより、日本の農業を振興するべきではありませんか?
A
はい、日本の将来の食料問題を考えたときに、何よりも重要なのは、この国の農業です。したがって、コオロギなどの新しい選択肢を用いることなく、今の農業の延長線上で、将来にわたって食料を安定的に確保することができるのであれば、それが最も良い未来だと思います。しかし、世界人口の増加と気候変動の影響を考慮すると、必ずしもそれは容易ではないと考えられるため、私たちは、未来の選択肢の一つとして、コオロギ事業に取り組んでいます。そもそも、食用コオロギ事業は、各民間企業の判断と責任の下で取り組まれているものですので、何ら政策的に振興されておりません(Q6参照)。
Q25 コオロギは、どんな味ですか?どんな食べ方が美味しいですか?
A
味の感じ方は人それぞれですので、一概には言えませんが、フタホシコオロギの場合、エビなどの風味と、トウモロコシや大豆のような穀物の甘みが感じられ、肉質も豊かです。ヨーロッパイエコオロギは、フタホシコオロギと比べると、あっさりとした食味で、干し草のような風味が感じられます。
食べ方は、油で揚げたり、炒めたりして食べるのが美味しいです。油との相性が良く、素揚げ、アヒージョ、てんぷら、エスニック風の炒め物などが特にお薦めです。